晋江文学城
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27、4 カウンター ...

  •   カウンターに落ち着いた2人に小百合はシャンパングラスを差し出した。グラスの中身は深幸が小百合に渡した最高級の逸品。淡いゴールドの輝きをもちながら殆ど透明の液体の中に、幾筋もの気泡の上昇をたゆたわせ、清冽で芳醇な香りを醸し出している。
      宗聖は深幸にグラスを掲げ、ゆっくりと味わった。

      「子供達は?」
      「ありがとう、とても元気よ」
      「それで?」
      「・・・」
      「義姉さん?」
      「はじまるわ・・・」
      それだけだった。深幸はそのことを告げるためにきたのだ。
      「そうですか・・・」

      「でも心配するようなことにはならないから」
      深幸が葵のことを指していることはわかっていた。
      逆上したナニモノかが、もしくは騒動に乗じて熱海の覇権を奪い取ろうとする力が、本陣を崩せなければ溝を埋める。溝はこの場合、西野の家族、父と宗聖。そして今や葵もその内に認められる。

      「具体的にどうなるのか教えてはもらえないのでしょうね?」
      「直ぐにわかるわ」
      深幸は一切無駄なことを言わない。
      「俺にどうして欲しいですか?」
      「何も・・・」
      「何も?」
      「ええ」
      「わかりました」

      深幸は微笑むとシャンパングラスを空け、ソリチュードに行きたいと告げた。
      宗聖は快く受け入れ、小百合を伴って自分の店に入った。

      8席のカウンターは埋まっていた。テーブル席も1つ客が入っている。悟は常連の数人とカウンターで会話しながら宗聖が押し開けたドアに振り向いた。実はカウンター内には表から地下へ降りる階段に監視カメラが仕掛けてあり、出入りする客の様子がわかるようにしてあった。

      「いらっしゃ~い」
      妙なテンションの悟がニッコリ微笑んだ相手は、宗聖ではなく宗聖が伴った美人にだった。すかさず小百合が悟に釘を刺す。
      「悟ちゃん、あたしには?冷たいのね」
      「小百合ママ。そんなことないですよ。小百合ママのことは愛してるんですから」
      宗聖はこっそり天をあおいだ。悟のこんな台詞を聴くたびにまいっている。宗聖には絶対言えない一言だ。
      すっかりいつもの化けの皮を被った小百合が悟をかまい付ける。
      「わかってるわ、悟ちゃんのこと疑ってないから」
      「ええ、ありがとうございます。で、いつもので宜しいですか?」
      「それがね、ごめんなさい、お持たせしてきちゃったの。いいかしら?」
      小百合は抱えてきたシャンパンボトルを悟に差し出す。
      そんなこと珍しくもない悟は笑顔で受けとる。

      「いい子がいるのね」
      「あいつは悟です。俺がいなくてもどうにでも対処できる奴で、頼れますよ」
      「そう」
      深幸が小百合とじゃれあう悟を見つめ、一瞬不思議そうな顔をしたが、それとは宗聖に見せることはなかった。

      1時間ばかりソリチュードで酒を酌み交わすと、深幸は待たせていた車を呼び、熱海に帰っていった。
      宗聖をたじろがせることばかりで、核心に触れない深幸との会話は、宗聖自身に疲労を感じさせ、手強い女がいたもんだと、思わざるを得なかった。深幸の毒気を抜くのにしばらくかかったのはいうまでもない。

      やがて頃あいを見て奥にひっこんだ宗聖と小百合は真剣な顔で向き合う。
      「いい女だね」
      真顔で小百合が女性を誉めると、やや薄気味悪い。正体をわかっているから素直に聞ける言葉だ。
      「ああ、兄貴が惚れこんでいるだけのことはあるな」
      「いい兄上なのね」
      「そうだと思う。5つも年が離れているせいか一緒に遊んだというような記憶は少ないが、常に俺を男として扱ってくれた。たぶん親父がそうだったから。いつも俺を尊重してくれる」
      「で、海藤の姐が来たということは、警告に来たと思っていいのね?」
      小百合は昼間のうちに既に深幸とは何がしかの会話をしているはずだが、それでも宗聖に確認をした。
      「そのようですね」
      「どうしたい?」
      「あの人は、何もするなと言いましたから、何もしないつもりです。ただ降り掛かる火の粉は払わねばならない。火の粉にまんまと焼かれるとはあっちも考えていないでしょうから」
      小百合は頷くと、小さな新聞記事を差し出した。
      今日の夕刊だった。
      それによると、今朝方、熱海の小料理屋で女将が別れた夫に刺されたと出ていた。夫は1年前に蒸発していたが、先ごろ舞い戻り復縁をせまり元妻にしつこく言い寄っていたとある。
      何もなければ、ありきたりの記事として流せた。
      だが、今ではその小さな事件がトリガーになるのでは、といういい様もないどす黒いものが感じられる。この時期だから不穏に感じるだけで、実際は偶然だと思って済ますほど宗聖も小百合も甘くはない。

      そしてそれはやはりトリガーとなった。

      数日後、熱海に外資の大きな遊興施設を運営する企業が乗り込んできた。実際にはその企業の意を汲んだM&Aのベテランが来たのだが。

      そのプランは海岸沿いのメインストリートを完全に造り替え、完璧な商業化を演出するというものだった。既に数件の土地や建物がその会社の所有になっていたことに加え、そのプランの元を作ったのが秋芳だということまで白日の下に晒された。メインストリートの3割は海藤の傘下にある。

      覇権を争う抗争が起きると踏んでいた宗聖には、予想外の展開ではあった。

      だが、抗争を望んでいた組織には格好のチャンスであったのだろう。不満を煽る分子が焚きつけたのか、メインストリートでスナックを繁盛させていた海藤組の一人が刺されたのは「熱海、ラスベガスに乗っ取られる」の記事が新聞に大きく取り上げられた翌日だった。

      深幸が鎌倉を訪れて1週間もたっていない。
      その日から熱海の裏社会は不信と疑念が渦巻く暗い闇を迎えた。
      堂々と日の当たる道を突き進むことで海藤の名を残そうとする秋芳。
      熱海乗っ取りをちらつかせるアメリカの巨大ホテルチェーン。
      そこに乗じようとする利権に食いついた企業。
      昔ながらの組織の存在に固辞する以外に他の生き方を知らない者たち。
      そのどっちにもつけず戸惑う、やり直しがきかない年を重ねすぎたものたち。
      その仕組みを理解しきれない若すぎる者たち。
      隙間に落ちる利権を我が物にしようと暗躍する西からの勢力。

      9月の末、利己的な欲望に捉われたあらゆる力が熱海の町を覆いつくそうとしていた。

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