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18、第16話:恋人《中編》 ...
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「私ね、未来が好きなの」
それは親友のるーちゃんから聞いた言葉。
まだ小学生だったために好きとか嫌いとか、そういう感情を私はよくわかってなかった。
「私、るーちゃんのこと、応援するからね。頑張って」
「ありがとう、舞」
その時の私はまだミクちゃんには恋してなくて、ただ彼女の役に立てればいいなと言う程度の気持ちでそう言ったのだと思う。
まさか自分のその一言が数年先に私とるーちゃん、ミクちゃんの3人の関係に影響するなんて思ってもなかった。
ミクちゃんは私にとって優しい幼馴染の男の子だった。
そんな彼に私が恋をしたのは中学生になってから。
身体の成長と共に心が成長してくる、今までなんとも思ってなかったはずの男の子を意識してしまう誰にでもある時期。
私にとって、初めて男の子を意識をしたのがミクちゃんだった。
きっかけは彼に恋したワケじゃなくただ1番近くにいた存在だっただけ。
でも、意識するだけでその気持ちは時間をかけて恋に変わっていた。
私はミクちゃんが好き。
そう思い込むようになってはいたけれど、私にはどうしても超えられないワケがある。
るーちゃんの存在、彼女がミクちゃんを好きなのは私よりもずっと前。
それも私とは違う本物の恋。
私にとっては勝負にもならない、ううん、既に負けている立場だと思っていた。
だから、私はるーちゃんを応援する事にした。
最初からそうしていればよかったのに。
でも……中学3年生の冬、私は1つの希望を手に入れる。
「それじゃ、どうして私には優しくしてくれるの?」
彼の優しさ、誰でも勘違いしてしまうその優しさのワケ。
「……舞が好きだからに決まってるだろ」
「え?ミクちゃん……?」
「それじゃ答えになってないかな……」
私はミクちゃんから告白されてしまった。
好きだって、私の事を好きなんだって。
「……それって告白?」
「え?あ……」
「俺は舞が好きなんだ。……俺と付き合ってくれないか?」
「……ミクちゃん」
好きだと言われて嫌だなんていえない、誰だって私も好きです、と言いたい。
だけど、私は直前でその言葉を飲み込んだ。
「ごめんね、ミクちゃん。私はミクちゃんの恋人にはなれないよ……」
「舞……」
私は思わず涙が零れた。
嬉しくて、それなのに悲しい。
るーちゃんじゃなくて、私の事を好きなのは嬉しい。
……私を選んで、るーちゃんが傷つくのは悲しい。
友達が好きな相手、その相手に恋をした時点でこうなるのはわかっていたのに。
それでも私は恋を捨てれずにいた。
「何で、舞が泣くんだよ。傷つけてしまったならごめんな。そういうんじゃないんだ」
「ううん。……違うよ、ミクちゃんのこと嫌いだからじゃない。私もね、ミクちゃんの事は好きなの。好きだけど……ダメなの」
「……るーちゃんもミクちゃんのことが好きだから。私、相談受けてるから。だから、るーちゃんからミクちゃんは奪えない」
私が彼女を裏切るのはしたくない。
絶対に裏切りたくない。
それなのに……矛盾するかのように私は自分の望みをかなえようとしていた。
あれから3年の月日が流れても私とミクちゃん、るーちゃんの関係は表面上は何も代わらないように見えていた。
それは見えないようにしているだけ。
本当は既にもう変わり始めていた。
私の18歳の誕生日、私は以前にしていた約束どおりに彼と一緒に夕焼けを見ていた。
ミクちゃんが約束を守ってくれただけでよかった。
そう、よかったはずなのに私はそれ以上を求めてしまった。
「……ねぇ、ミクちゃん。今日だけは我がまま言ってもいい?」
「ああ、せっかくの誕生日だ。何でも言ってくれよ」
「じゃ……」
私は彼にファーストキスをささげていた。
初めてのキスに頭がボーっとしてしまう。
「……んぅ」
唇を離したくないという気持ち。
彼女を裏切る事実に胸を痛めながら、私は言葉を紡ぐ。
「……私も……ミクちゃんの事が大好きなんだから」
「舞?」
「ミクちゃんが私を愛してくれてるのちゃんとわかってるから。いつも私を見てくれてるの。優しい貴方が私をどれだけ想ってくれてるのか、身体全体で感じてる」
彼の声、彼の言葉、彼の存在。
その全てが私の中に想いとして伝わっている。
忘れられるわけがない。
全てがなかった事にはできない。
そして、花火大会の夜に私ついに彼女を裏切る。
前日にるーちゃんと約束をしていたミクちゃんに2人で花火をみたいと誘った。
彼女がどんなに喜び、楽しみにしているか分からないワケがない。
なのに、そこまでしたのは私にも好きと言う気持ちが強い。
この気持ち、るーちゃんには負けない。
花火が終わった後に、私はミクちゃんに言ってしまう。
「……ミクちゃん、その……私……今日はずっとミクちゃんと一緒にいたいな」
「え?」
「……この手、離したくない」
その言葉、どんな意味が込められているのかわからないほど互いに子供じゃない。
誘惑する私に彼も頷きながら、
「本当にいいのか?」
「うん。ミクちゃんなら……」
私の全てをささげてもいいと思った。
本物の恋人のように。
甘い関係になりたいというのは私の我がまま。
「ミクちゃんに甘えたいの……。その……好き……だから」
「……わかった」
一線を越えてしまうことに恐怖も不安もある。
止めれるものなら、止めて欲しい。
自分でも抑えられない気持ちがあった。
そして、私は罪を背負った。
るーちゃんを裏切り、ミクちゃんと共に歩む道を選んだ。
ただ“恋人”という名でないだけの深い関係になってしまったんだ。
私は日記を付けていた。
趣味という程でもないけれど、ミクちゃんとの出来事を書き記している日記がある。
初めての言葉は偽りの恋。
初めてミクちゃんに告白された時から、彼と何か楽しい事や辛いこと、体験したことを書いた日記。
私とミクちゃんの全てがそこには書いてある。
そして、その日に書いた私の文章はこう始まっていた。
『ごめんなさい』
それは私がるーちゃんに伝えなくてはいけない言葉だった。
「私……そろそろ未来に伝えたいなって思ってるの」
「え?」
「ほら、告白っていうのかな。ちゃんと自分の気持ちを伝えて……未来と恋人になりたいなって。私たちも高校3年生だもの。もう時間もないし、それに……私は未来のように大学にいくわけでもないから……触れる機会も少なくなるだろうから」
「そ、そうだね……」
彼女の気持ちは痛いほどにわかっていた。
理解していたのに、私は裏切りを続けていた。
そんな私を彼女は知らない。
私が裏切っているのを知らないるーちゃんは私にまだそんな事を言ってくる。
「……それでね、私……この夏に告白しようと思ってたの。ホントは昨日の祭りで言っちゃうつもりだったんだけど、ドタキャンされちゃったし。うまくいかないね」
「あ……」
思わず小さく呟いていた。
昨日、告白しようとしていた。
彼女がそこまで覚悟していたのに、私は何をしていたの?
ミクちゃんに抱かれていた自分を思い出す。
ひどく卑怯な自分がどこまで嫌になった。
人に好きだと伝えることがどれほど大変な覚悟がいるかわかってる。
知っているからこそ、私は彼女に申し訳なかった。
「……今が2人にとっても1番大事な時期だってわかってる。だけど、私は未来が好き。好きだから……何もできないけれど傍にいてあげたいなって……」
「傍にいたい……」
「うん。最近、未来は忙しそうだし、私にできることを探してるの。……ほら、恋人だったらいろんな意味で支えてあげられると思って。その……精神的にも□□的にも」
微笑する彼女はホントに恥ずかしそうで、でも、嬉しそうな顔をしていた。
何も知らないからそんな顔ができるんだ。
言葉だけの罪悪感、私は初めて本当の罪悪感というものを体験する。
罪の意識は私の胸に棘のトゲのように突き刺さる。
「こんなこと、舞に頼んでいいのかわからないけど、協力してほしいなって」
「……うん。私にできることならなんでもするよ」
私はウソを重ねていく。
大切な人を裏切っているのに、それなのに……重ねるウソに既にためらいがない。
私、ホントに最低……。
だから……私はただ1つだけの一線を超えられずにいる。
恋人になる事。
それだけは絶対にしないと思った。
何度も諦めずにミクちゃんは私に告白してくれる。
付き合おうって言ってくれる。
その気持ちは嬉しいけれど、恋人と言う関係になれば隠していける自信もないし、私はきっと嫉妬してしまうから。
純粋にミクちゃんの幼馴染でいようとするるーちゃんに。
奪っておいてひどいかもしれない。
でも、女の子としては自分の好きな相手には誰も他の女の子が近づいて欲しくない。
先に裏切っているのはこちらだというのに。
誰に相談するでもなく、私は1人、そんな汚れた自分と向き合う。
その度に、私は……暗闇におちていく。
そんな私が一線を越えてしまう覚悟をしたのは秋の深まる10月のある日。
覚悟をせざるを得なくなった、というのはきっと言い訳にしか聞こえないよね。
「どうしよ、私……告白できないよぉ」
るーちゃんは花火大会以来、告白する機会を失っている。
ああいう特別なイベントでもない限り、彼女のように幼馴染と言う近い位置にいる人達の関係が発展することはないと雑誌に書いてあるのを真に受けていた。
「馬鹿ねぇ、そんなの関係ないって」
「他人事みたいに言わないでよ。確かにこの本のいう通りなんだもん」
千夏ちゃんはいつものように彼女の話をネタに話を盛り上げている。
恋の話は女の子にとっては美味しい話題だから。
もちろん、千夏ちゃん達は私と違い、本当に協力する気ではあるけれど。
私はそんなみんなをいつものように一歩ひいた所で見ている。
「るーちゃんは純粋だよね」
「うわっ、舞にまでそんな事いわれるし……。もうダメなんだなぁ……」
「まぁまぁ、そうしょうげるんじゃないって。ほら、体育大会とか文化祭とか告白には定番のイベントも近いんだから。そこで頑張ればいいじゃない」
「無理……、体育大会は運動できない私にはあんまり気分のらないし。文化祭は……きっと私じゃない相手と見るに決まってるもの」
その言葉に私ドキリとした。
るーちゃんの視線は私に向けられていない、どうやら私の事を知って言ってるわけじゃないらしい。
「どうしたのよ。いつもなら自信たっぷりに狙いにいくじゃない。そーいう最初から負けてるみたいな言い方らしくないよ?」
「……最近、未来は私なんかじゃダメなんだと思うんだよね」
「どうして?幼馴染としては留美と長谷部君は最高の相性じゃない」
「相性はいいけどね、幼馴染としてじゃない。恋人はそういうんじゃないもの。それに……未来には他に好きな子いる気がするんだ。私じゃない誰か、そんな気がしてる」
皆彼女の言う言葉に黙り込んでしまう。
普段、明るい彼女がこういう事を言うのは本当に珍しい。
だからこそ、それが真剣であると分かる。
私の事を知っている?
もしも、知っていたら私の事を彼女は許さないはず。
まだ気づかれていないだけかも。
相手が私ではなくても、他に好きな子がいることには気づいているんだから。
「……なんてね。ダメだね、うまくいかないとそういう事ばかり考えちゃって」
「びっくりした。もう、そういう考え方は留美らしくないよ。いつもみたいに無駄に自分に自信もって長谷部君と付き合おうって構え見せてくれなきゃ」
「無駄には余計です。ま、そっちの方が私らしいか」
慰める千夏ちゃんとは違い、私は眺めているだけしかできなかった。
彼女が笑う、その笑みに私は胸が痛む。
人を騙すことがこんなにも辛いなんて。
その後の彼女はいつもの彼女に戻っていたから、もう誰も気にしてる様子はなかった。
ただ1人、私だけを除いては。
私は家に帰ってからも1人、私達の関係について考えてる。
私はミクちゃんが好き、これは変わる事がない。
ミクちゃんが私を好きなのも、自惚れでなければ変わらないと思う。
それに気づかないるーちゃんはずっと彼に片想いし続けている。
「知らないという事ほど怖いことはない」
実際には私と彼はもう深い仲であるというのに。
私が今まで我慢していたのは彼女に対して、引け目があったから。
他人の想い人を横取りしてる、そんな罪悪感。
親友を騙してでも欲しい気持ちがある。
それは女の子としての気持ちで誰にも止められるものじゃない。
だからこそ、その結論にいたってしまう。
「……もういいよね。もうこれ以上は……私も抑えられないし」
そして、私は1つの運命の決断をする。
3年の月日を経て、私は彼へ想いを込めて言葉を紡ぐ。
『俺は舞が好きなんだ。……俺と付き合ってくれないか?』
あの日、彼が私に告白していなかったら?
きっと私がこんな風に思う事もなく、幸せにミクちゃんとるーちゃんはくっついていた。
幸せを奪う私の事をるーちゃんは責めるだろう。
だけど、例え、友情を失ってでも……。
「ミクちゃん、あの時の告白の答えを伝えるね。……私は貴方の恋人になるわ」
本当に欲しい物だけはどんなに辛くても諦められない。
……ミクちゃんに私は自分の本当の気持ちを告げた。
私はミクちゃんと恋人になる関係を選んだ。
友達ではなく恋人になる事で、私達の関係を明白にするために。
これで、私達にはもう逃げ道はない。
それほど遠くない時間の果てに私は友を失くすに違いない。
それでも、私はミクちゃんを選んだ。
私のこの決断が……ミクちゃんが1番幸せなんだと想って。
【 To be continue… 】
☆次回予告☆
高校最後の文化祭。
未来と回る予定だった留美。
だが、未来との思い出が欲しい、
その願いを残酷にも未来は打ち砕く。
そして、未来と舞が一緒にいる決定的な場面に出くわしてしまう。
【第17話:恋人《後編》】
どこにもない希望の光。
それでも少女は探し続ける。