晋江文学城
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9、9 葵の仕事は ...

  •   葵の仕事はまたいつもの倉庫係りに戻った。葵の浴衣が好評だったので、いつの間にか仕入れ係が葵の意見を聞きにくるようになった。葵は最初単に聞かれたことに答えて会話をしているだけのつもりだったので、それが仕入れに関わる意見だと知ると、途端に言葉が出なくなった。

      「あの、これって大事な仕入れなのですよね?私の意見などは・・・」
      困る葵の言葉を仕入れの牧田は笑って流した。
      「大丈夫だよ。この間のバッグだって直ぐ買い手ついたし、ちょっと好みを教えてくれるだけでいいんだから。」
      「困ります。私本当に。もしダメだったら申し訳ないですし、、、、」
      「大丈夫。部長の確認も取ってあるし、意見は全員から聞くんだから」
      そういって慰められて絶対他の人の意見も聞くと約束をしてから、やっと葵はサンプルを見た。その日牧田が持ってきたのは夏らしい透かし模様の櫛や簪だった。昨年から流行の銀細工。

      「これ選ばなければいけませんか?」
      「えっ、何か変?」
      「これ髪に挿しにくいんです。それにはずす時も髪が絡まって・・・」
      「えっそういうもんなの?」
      「ええ、わかってる方は敬遠すると思います。」
      「そっか、ということは去年買った人は今年は買わない?」
      「たぶん・・・」
      「わかった。ありがとう。参考になったよ。」
      牧田はサンプルを包みなおすと部長室に向かった。

      それ以外、葵は相変わらず無駄口もきかず、真面目に仕事をこなす日々だった。

      梅雨らしい天気が続いたある日、葵は人事課長に呼ばれた。本社には20人しかいないが、地方で仕入れや外商に回っている社員が20人以上いるし、大手のショップを多数抱える呉服店には派遣店員も多く出しており、社員は総勢100人を超える規模になっている。
      人事課はそれら社員の管理全てを行っている。

      「山下葵さんね?」
      人事課長は大手百貨店でパート社員の統括をしていたことがある女性で、既に50歳を超えている。体を壊して百貨店をやめ、回復した後この会社に入っている。
      「はい、山下です。」
      「貴女に移動の打診がきていますがどうしますか?」
      「はい?」
      「移動先は仕入れ部門です。部長と牧田さんから熱烈なラブコールですよ。入社数ヶ月での移動は稀なのだけれど、社長も本人がよければ、と確認済みです。」

      変わった会社だ。社会の仕組みに詳しいわけではないが、人事異動が本人の意思と関係なくすすめられるものだという認識はあった。それなのに今、葵は異動を打診されている。しかも仕入れ部門だなんて。責任が重いにちがいない。

      「私では勤まらないのではないでしょうか?未経験なのはもちろんですが、全く専門的な訓練をしておりませんし・・・」
      「仕入れの訓練なんてないのよ。仕入れ部門が必要としているのは、どんどん持ち込まれる新たな企画商品を選り分ける目が欲しいの。それには即実践で確かめられるモデルが必要なのよ。もちろんいくつかはモニターにチェックしてもらってから仕入れを検討するものもあるけれど、社内の目が偏りつつあると判断したのよ。あなたの意見もそこに取り入れて見たいのよ。どう?面白いと思うわよ?先日の紫陽花祭りの時に貴女のセンスは拝見したわ。とてもよかったもの。それを役立てなさい。会社のためにね。」

      「はい・・・」
      葵は誰かに認められたということにうれしさと恥ずかしさが同居したようなくすぐったさを感じた。顔が困ったようなうれしいような表情になっていたと思う。
      「では辞令は明日付けで発行しますからね。明日から早速仕入れ部に行って頂戴。」
      「あのでも私の仕事は?」
      「大丈夫もう手は打ってあるわ。」
      「そうですか?」
      「結婚で退社した女性がいるの。その人にしばらくパートに来てもらうから。その間にフルで働ける人を採用するわ。今年は新入社員貴女だけだったしね。」

      翌日から葵は仕入れ部に出勤した。といっても2階から1階に移っただけだし、倉庫が1階奥にあるので、毎日通りすぎていた部屋だった。
      改めて牧田の下につき仕事を覚えるように部長に激励されて、緊張しながらも身を引き締めて「頑張ります」と挨拶をした。

      そして最初のミーティングで葵は不思議なことを言われた。殆どの仕入れ業務はここで行われるが、相手が大手の場合はこちらから出向いて季節ごとの商品を半年も前に発注している。その出向く時に和服で一緒に来て欲しいというものだった。できれば普段も和服がいいのだがそれでは、負担が大きいので、困るだろうというものだった。お茶やお花に通ったことで和服をそろえているので、1ヶ月に1枚程度なら季節ごとに着こなす準備はあるが、普段用となると確かに話は別だ。

      「あの・・・」
      「なに?」
      「旅館の仲居さんがきてるようなのを制服として出していただくのはだめですか?ああいうのでしたら毎日同じのを着ていても誰も変に思わないと思うのですけど・・・ダメですよね?」
      「いや、それで君がいいなら大丈夫だよ。先日のお祭り以来、制服を和服にする話が出たくらいだから、そのときに調べたデータもあるし。着易いかどうかもあるだろうからサンプルも取り寄せられる。」
      「そうですか。それでしたら私は構いませんけど。」
      「でも毎朝着付けが大変じゃないか?」
      「いえ、仕事用でしたら、帯も形が出来ていると思いますから、そんなには。」
      「じゃあそれで決まり。」

      1週間後、葵は同じ柄で色違いの着物と帯、小物を3セット手渡された。足袋だけは履き慣れたブランドがよいので、断わった。
      和装一式が入った衣装ケースを持って家に戻ろうとバス停に向かっていたとき、葵は宗聖に声をかけられた。バス停の手前、歩道に寄せるように止まった車の運転席から宗聖が呼んでいた。
      「乗れよ、送ってやる。」
      内側から助手席のドアをあけ、葵が抱えている荷物の大きさに顔をしかめると、宗聖は運転席を降りてきた。後部座席のドアをあけ葵が手にしていた荷物を取り上げるとそこにおき、助手席のドアを押さえて葵を乗り込ませた。

      お祭りの夜から3週間たっていた。
      「上出来だ。」
      「何がですか?」
      「俺を危険だと思わなかったから大声を出さなかったんだろう?」
      葵はその言葉に赤面した。
      危険だと思っていないわけではない。それは充分承知している。たった2度の出会いはあまりにも衝撃すぎて葵の手には負えないだけだ。ただ先ほど呼び止められたとき、宗聖は「葵」と呼び捨てにしたのにそれがちっともいやらしくも冷たくもなく、なぜか優しさを感じた。それだけのこと。

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