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25、第23話:自分勝手な想い ...
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2月の中旬、月明かりが寂しく入り込んだ真夜中の部屋。
舞が死んだあの日からもう3ヵ月も経つのに……俺達はまだ怯えている。
俺は強く彼女を抱きしめる、彼女の不安を打ち消すように。
ただ絶望から逃げる方法としてだけの関係。
彼女は俺の恋人ではない、俺は今でも舞の事を思い続けている。
だから、俺も本気で留美を愛する事ができない。
それでも留美の傍にいたかったのは、お互いに1人になる事が怖いから。
俺はぐっすりと眠っている彼女を起こさないようにして身体を起こす。
窓を開いて俺は外の空気を吸った。
今日はなんだか寝つきが悪い。
「……月が綺麗だな」
俺はベッドで寝ている留美を見つめた。
留美は俺に対して愛情を向けてくれている。
それはもう十分に伝わっていた。
「ごめんな……」
謝罪しても何も意味もなく、彼女を傷つけるだけだという事は分かっていた。
俺がしてやるべきことはそんな事じゃない。
「……未来」
思わずドキッとして俺は身体を離す。
……彼女は起きた様子はない、ただの寝言か。
寝言ってホントに怖い、自分でしゃべってる事がわからないし。
いや、たまに自分の寝言で目が覚めることはあるけどさ。
もしかしたら、俺も寝言で何か言っちゃってるかもしれない。
もしもそれで留美を傷つけるようなことを言ってたら俺は最低だな。
「……」
俺は静かに寝息をたてる彼女の頬に口付けた。
どうしても、それは起きている留美にはしてやれない行為。
『……未来っ……キスして……』
彼女の行為の最中にキスをしてとねだる。
そんな留美に対して、曖昧な態度と行動でしか想いを示せない。
『もう何も言わないでいいよ、未来。もう2度と私に期待させないで。これ以上、失望するのだけはもうホントにうんざりなの』
俺は……留美を受け入れることはできない。
あの時のように傷つけてしまうのは目に見えている。
俺は……留美に幸せをもらっているのに。
「いつか……俺は留美を好きになれるかな」
舞はもういない、その現実を俺は徐々にだが受け入れてはいた。
舞がいなくなり俺達の生活も変わって、その変化に戸惑いながら歩んできた。
もうすぐ大学受験が始まり、俺は新たな道を進むことになる。
その時、留美はどうするのだろうか、俺と留美との関係は……続けていけるのか?
このままがダメなのはわかっている。
俺の1番近くいる女の子、それはもう舞ではなく留美だと……そんな現実が今、俺の前にある。
「……俺は……俺が好きなのは……」
俺はそれから先の名前を口に出来なかった。
その代わりに俺はもう1度だけ彼女に対して頬にキスをする。
……微かに留美は「んっ……」と声をあげる。
その姿は本当に可愛いのに、彼女に対して何もしてやれない自分がふがいなくて。
俺は自分勝手で弱い自分がホントに嫌になる……。
大学受験まであと1週間と迫ったある日。
俺は最後の追い込みとばかりに猛勉強にあけくれていた。
もう学校の方は自由登校なので、俺は学校ではなく図書館通いをしている。
その日の朝も俺は病院にいく留美を見送ってから、図書館に行くことにした。
留美は傷の具合はもうだいぶ良くなり、あとは胸についた傷の治りの経過を見てもらうだけだったはずなのだけど、ここ最近はなぜか2、3日続けて行っている。
どこか身体が悪いのか、と心配になるが、彼女は特に何もないというだけでそれ以上の事はわからない。
俺は大丈夫だろう、と楽観的に思いながら、自転車をこいで図書館に向かった。
それからはもう1日中勉強をして、受験に備えるだけ。
大変だけど、これで俺の人生が左右されるのだから頑張らないとな。
俺は留美に電話をかけると彼女はすでに買い物にでかけていた。
なので、俺はそのまま自分の家に帰ることにした。
ここ最近の俺達は互いの家を行き来しあっている。
俺達は傍から離れる時間はそんなにない。
夜に関してはほとんど毎日、俺は留美の家に泊まるほどだ。
留美だけでなく、俺の家の両親も俺達の関係については黙認している。
ただ親父に一言だけ、「もしもの場合は男として責任を持て」と言われた。
もしも、か……こういう生活をしていればいつかはそういう事もあるだろう。
その時、俺は留美に対してどうするか、責任を持て、それは本当に重い言葉だな。
「あ、未来さん……!」
「空さんじゃないですか。こっちに帰ってたんですか?」
前から歩いてきた空さんと出会い、俺は自転車をとめた。
空さんは村の外の大学に行ってるために、こうして会うのは珍しい。
「もう、春休みだからね。……そうだ、今から時間あるかしら?」
「ええ。これから帰るだけですからありますけど?」
「それじゃ、少しお話しましょう。未来さんと話したいことがあったの」
俺達はそのままおやっさんの店にやってきた。
扉を開けると、空さんは働いてる胡桃さんと顔を合わして、笑顔を見せた。
「久しぶりね、胡桃」
「空!?こっちに帰ってきてたんだ。もうっ、連絡くらい頂戴よ」
「ふふっ、貴方を驚かせようと思っていたから」
空さんと胡桃さんは同い年で、親友同士だ。
俺達も昔から2人の事は知っているけれど、傍目に女の友情っていいなぁと思える。
俺達はテーブル席に案内され、注文をそれぞれ言うと、おやっさんがようやく顔を出す。
「何だ、未来と空嬢とはまた珍しい組み合わせだな」
「ええ。ちょっと、彼に話があるから。あ、マスター。この子も借りてもいい?」
「ああ、好きにしろ」
「私はモノ扱い?」
胡桃さんは自分の扱いに嘆きながら、自分の分の紅茶も入れて持ってきた。
俺はいつものようにコーヒーを飲んで勉強疲れを癒す。
「私も話に入っていいの?」
「というか、貴方が最初に気にしてたんじゃない。私も気になったから直接聞いてみたくて。……ねぇ、未来さんは私達が気にしている事分かる?」
「あ……舞の日記の件ですか?あの件にはお世話になりました」
空さんいたから、あの日記が俺の元に来たのだと留美から聞いた。
そのせいで、留美を傷つけてしまったけれど、舞の大切な日記は俺に大事なものを教えてもらったから。
「うーん、それじゃなくてね。ごめん、胡桃。やっぱり貴方から言ってくれない?」
「どうして、そういう所で私に任せるかなぁ。まぁ、私が連絡したのもあるけど……。未来君、私達が気にしてるのはね……留美ちゃんの事なんだ」
「留美ですか?」
美人が2人して俺の顔を覗きこんでくるのにドキドキしながらも、俺はなぜ留美の話なのかという疑問を抱く。
いや、別に彼女達にとっても留美とは仲いいから問題ないかもしれないけど。
「……ぶしつけだけど、未来君って留美ちゃんと恋人関係なの?」
「それは……」
胡桃さんの質問には俺は明確な答えを持ち合わせておらず、どうなのだろう?というのが本音であり、俺が彼女を好きになれない限りは本当の恋人ではないと思う。
だが、世間一般から見れば恋人に見えるしな。
「即答できず、ね。私、留美ちゃんから聞いてるんだ。未来君が本気で恋してないこと。貴方はまだ……舞ちゃんとの事を思ってるんでしょう?」
「……ええ。心の中にはまだ舞がいます」
これだけはどうしても消えない。
忘れたくないんだ……。
俺のそんな態度に空さんは俺に言った。
「妹のことを想ってくれるのは嬉しい。けどね、未来さんには支えてくれる留美さんがいるじゃない。私は“過去”より“今”の方を大切にしてあげて欲しいの」
今を大切にして、それはわかっているんだ。
空さんだって、妹が亡くなって悲しいはずだ。
……俺達の事はこの村ではそれなりに噂になっているらしい。
皆の気持ちはわかっているつもりだ。
俺のしている事が留美を傷つけているという事も。
「空さん達の言うこともわかっているつもりです。舞の事が“過去”だという事も、今の俺が大事にしなくちゃいけないのは留美だという事もね。それでも……」
俺の気持ちも彼女達は分かっているはず。
胡桃さんも空さんも俺と留美とのことを考えてくれていることは嬉しい。
特に留美に対しては同性としての気持ちもあるだろう。
「俺は舞を“過去”として割り切れない。頭でわかってるつもりで心が拒むんですよ。アイツは俺にとって本当に大切な人だった。恋人だったから……」
「……だから、忘れて他の子と、なんて事を言ってるわけじゃないわ。あの子の気持ちも考えてあげて欲しいだけ。留美ちゃんは貴方の痛みなら全部受け入れる、そんな子よ」
「今の貴方達を見ていると、私達も辛いわ……」
俺は何も言えなくなってしまった。
留美を傷つけたくない、そう……俺はずっとそればかりだった。
舞と付き合う前も、付き合ったあとも、そして今も。
俺はあの子に対してひどい事ばかりしている。
それなのに、留美は俺に対して直向に愛してくれて。
それに答えてあげられない自分が嫌いで。
考えても、悩んでも……俺の中にどうして最後に留美への思いを止める心がある。
「……俺はどうしたいんでしょうね」
「これからはどうするつもり?大学が受かれば、この村を出て行くんでしょ?留美さんも一緒についていかせるの?」
「それは……わかりません」
留美は俺が望めばついてきてくれるだろう。
そうなると、本当の意味での同棲になる。
さすがにそうなってくると、今までのような曖昧な気持ちではいられない。
本当に愛して、彼女の人生さえも背負う覚悟を持つことになる。
「……きっと今の未来君はきっかけ1つで彼女のことを好きになれるよ」
「幼馴染以上恋人未満、か……」
「だからこそ、今、悩むことは悪いことじゃないわ。留美さんの事も考えてあげて。未来さんなら最後にはいい方向にいけるはず。舞も幸せになってもらう事を望んでるわ」
「わかりました……」
すっかり冷えきったコーヒーを飲みながら、俺は2人の先輩方に感謝する。
今のままじゃいけない、つまりはそういう事だから。
俺が家に帰ると、まだ留美は帰宅してなかった。
さすがにこんな時間まで買い物がかかるとは思えない。
どうかしたのか?と俺は心配になり彼女の携帯電話に電話をかけてみた。
『……はい』
「お、留美。どうしたんだ?まだ帰ってないみたいだけど?」
『未来。今すぐに私の部屋まで来て。話したい事があるの……』
留美はどこか声に張りがない、沈んだその声が……何だか嫌な予感さえする。
俺はすぐに彼女の家に向かい、彼女の部屋に入った。
留美は部屋の真ん中で立ち尽くしている。
「どうしたんだ?」
「……未来。ごめんなさい」
「何が?おいおい、そんな暗い顔するなよ。何があったか言ってみろよ?」
留美の様子は沈んでいるだけではなく、何かに絶望するようなそんな表情だった。
「……私達、もう一緒にいられない」
「え?」
「ごめん……ね……」
ふわりと彼女の身体が俺の方へと倒れこむようにして、よりかかってくる。
「お、おい!?どうした!?」
彼女の身体はとても冷たくて、俺は舞が死んだ時と重なり、恐怖した。
「留美……?おい、留美!しっかりしろ!!」
俺の腕の中で意識を失った留美に俺は必死に呼びかけるしかなかった。
悪夢は再び、俺が本当に自分勝手だと知る事になる……。
【 To be continue…】
☆次回予告☆
突然の悪夢再来。
倒れこんだ留美の容態は?
だが、事態はそれだけでは収まらない。
神崎先生から聞かされた言葉。
それは……2人の運命を大きく変える言葉だった。
【第24話:悲しき眠り歌】
俺の曖昧な気持ちに耐え続けていた。
その果てに留美は……。