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2、プロローグ:いつも一緒に ...
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人にとって心の底から信頼できる友を持てたという事は誇りだと俺は思う。
かけがえのない大事な人、それは恋人だけに当てはまる言葉ではない。
親しき友と書いて文字通り、親友。
俺にとってその言葉に該当する人物は6人もいた。
俺、長谷部未来(はせべ みらい)を合わせた7人のグループは小中高と共に一緒にい続けて、それはもう兄弟、家族のような親しい繋がりがあった。
そして、あの忘れられない出来事があってからも変わることなく繋がっていた。
この絆は絶対に切れる事はない。
多分、一生俺達は親友でいられるだろう。
アイツを含めて……これからもずっと。
瞼を閉じてみればいつでも思い出せる俺達の軌跡。
すぐに思い出せるのは人生で最も濃かった時間、高校生の時のことだろ。
進路に悩み、これからの将来を真剣に考えたり、好きな人に恋もしたり、連中とバカ騒ぎも山ほどしたあの思い出の日々。
俺はその思い出の断片の1つ、高校3年生の春の事を思い出していた。
俺が住んでいるのは人口数千人程度の佐間村(さまむら)という村だ。
数年前の平成の大合併で、市町村合併話はうちの村でも例外ではなく、隣の市と合併となるはずだったのだが、お隣の市長が市議会を恐喝したとかそんな事件のせいで合併話は白紙となり、結果、時代に流される事なく、いや時代に置いていかれたといえるべきうちの村は合併のチャンスを逃してそのまま村として存在していた。
とはいえ、隣の市と合併していたとしても市内の中心部には電車を使っても数十分もかかるし、経済もそう厳しくない村だったのではっきり言って住人としては目に見えてメリットはなかった気がするが。
さすがに時代の流れにつれて、周囲を山に囲まれた陸の孤島と呼ばれていたのは今から数十年前の話だ。
今では村には中堅スーパーが2軒、駅前に大手コンビニが1軒と驚くべき進化を遂げている。
コンビニ程度、それがどうしたと思うかもしれないが実際、うちの村では大きな出来事だったのだ。
大手コンビニチェーン店もよくうちの村なんかに出店したねと褒めてやりたくなる。
まぁ、隣街と繋がる道路はそう悪い山道ではないのがせめてもの救いだろうか。
なんせ、自転車でも1時間もこげば隣街の端につくそれなりに整備された道だ。
本当の陸の孤島、山奥の村と比べればまだマシかもしれない。
この春、はれて俺達は最終学年である高校3年生になった。
地元に一つずつある小学校、中学校、高校と私立並にエレベーター式(実際ほとんど選択肢がない)で進めるのはある意味、メリットかもしれない。
高校の場合は試験はあってないものだからな。
というか、村の外へ受験して村から出て行くのは毎年1人か2人だ。
だから、必然的に同級生とはずっと腐れ縁のように同じ時を過ごしていた。
転校生や新たな移住者でもくれば少しでも変わるかもしれないが、こんな村にそんな人が来るはずもなく、ほんの少し、新鮮味というスパイスがかける日常生活を送っていた。
春うらら、珍しく朝早く目覚めた俺は散歩がてら自転車をこいで村の中を回っていた。
近所の元気な爺さん達と挨拶程度の会話を交わしていると、つい誘いを断れずに久しぶりにラジオ体操などしてみたりして、気がつけば時計は7時を越えていたので、いつものように朝飯を食べに近所の馴染みの喫茶店に入った。
喫茶店『Future』という直訳すれば俺と同じ『未来』という名前の店。
朝早くから店を開いているその喫茶店で朝飯を食べるのが俺の日課だった。
俺の家は両親が市内の方へ共働きしているために朝が早いので、高校に入ってからは朝食の準備などしてくれなくなった。
まぁ、あの親にそこまで面倒かけるのもなんだと思うので昼はバイト先でもあるその喫茶店へ朝はお客として通っている。
いつものように扉をあけると、カランッという鐘の音が店内に響いた。
「おはよう、おやっさん」
「……ん、未来か。おはよう、今日もいつものでいいか?」
「ああ、それでいいよ」
カウンターの奥で新聞を読んでるおっさんがいつものように朝のセットメニュー(税込み390円)を作りはじめた。
この喫茶店のマスター、本名は知らないが通称“おやっさん”は口髭をはやしている、いかにも喫茶店のマスターって感じのおっさんだ。
ナイスミドルという渋さは俺の憧れで、このおやっさんのいれるコーヒーは本当に美味しく、1度これを飲んだら缶コーヒーなど飲めやしない。
俺はそのコーヒーの味に惚れて、弟子入り気分でここでバイトをしているくらいだ。
練習はしてるが、まだまだおやっさんの味に近づくのは無理だけどな。
店内には数名の常連客がいて、俺はいつものようにおじさん達と会話を交わす。
「おはようございます、笹原さん」
「おはよう、未来。ほら、スポーツ新聞」
「どうも」
顔なじみのおじさんから読み終わったスポーツ新聞を渡された俺はいつものようにカウンターの席で読みながら注文した品が出てくるのを待つ。
応援している野球チームが勝ったのに小さくガッツポーズをしたり、芸能欄で好きだった歌手が若手芸人と付き合っているのにショックを受けたりして、日々平凡ないつもの朝を過ごしていると、おやっさんが朝のセットをもってきた。
「ほら、できたぞ」
「いただきます」
朝のセットは食パンと目玉焼き(スクランブルエッグの時もある)にハムもしくはソーセージとサラダ、そんなシンプルなメニューに美味いコーヒーと朝から十分満足できる。
俺はこのコーヒーを飲むだけでも朝からマラソンしてくるだけの気力がわくものだ。
ふと窓の外をのぞくと親友の1人が店内へと入ろうとしたところだった。
「おはよっ!マスター、いつもの!」
「了解」
やかましいほどの元気な言葉を適当に流して、おやっさんは俺と同じセットを作りだす。
俺の隣の席に座った女の子。
「ミライ、おはよう」
「おはようさん。お前はホントに朝っぱらから元気だな」
村1番の元気娘といって過言はないだろう、小柄ながら元気の固まりである美少女の名前は上西悠里(うえにし ゆり)という。
俺の親友である彼女もまた俺と同じように、この村ではそう珍しくないが両親が市内へ共働きをしているため、朝食を食べにこの店を利用する事が多い。
「新聞見せて。うわっ、あのアイドル引退するんだ。顔いいのに性格ダメだったからね」
俺から新聞をとりあげるのもいつもの事なので、俺は代わりに週刊誌を手にとってコーヒーを飲む。
おおっ、朝から見てしまうと元気になれる写真がのってる雑誌はいつ見てもいいなぁ。
なんて真剣に読んでいると、朝から悠里に睨まれるのでほどほどにしておこう。
「悠里嬢。ジュースはオレンジかアップルかどっちがいい?」
「アップルな気分かな」
どんな気分か知らないが、おやっさんがアップルジュースをコップにいれる。
ちなみにこのおやっさんは俺と同い年ぐらいの女子には全員名前の後に“嬢”をつける。
特に意味があるワケではないが、何か渋くてカッコいいぜ(憧れの視線)。
「お前、この店に来てコーヒーを飲めないのか」
「それ、毎日聞かされてるけど。ていうか、ミライはただのコーヒー好きなだけじゃん。美味しいのか知らないけれど、私はコーヒー飲めないもん」
「ふっ、この味を知らないとはお前は人生の1%を無駄にしているぞ」
悠里はそんな俺を「やれやれ」という肩をすくめる仕草をして、新聞に視線を戻した。
おやっさんはいつものように美味いコーヒーを入れてくれて、この店も常連だけの和やかな雰囲気につつまれているいつもの朝の光景が俺は好きなのだ。
朝食を食べ終えたあとはいったに家に帰って、学校の鞄を取りに行く。
うちの高校には制服がないのでそのままの私服でいい。
田舎の高校なので服ごときで風紀が乱れる事もないし、逆に派手な服でも着てこうものなら狭い村で噂にされて、カッコつけのメリットなどまるでない。
化粧や香水の類をつける女子もいるが、その辺も特に気にしない生徒の自由にさせている校風だが、その反面、自分の事は自分で責任を持てというワケだ。
田舎ならではだな、これが都会なら大問題だろ。
校門に続く道を歩いてると前に見知った2人の顔があったので声をかける。
1人は長髪の美人と筋骨隆々のマッチョな男。
片方の美女は湯瀬梓(ゆせ あずさ)、野獣の方は野村隆樹(のむら たかき)。
まるで美女と野獣だが恋人同士ではなく俺達を含めた幼馴染の間柄だ。
「おはよう、梓。と、ついでに隆樹」
梓は「おはよう」と言いながら自分の長い髪を撫でる。
何かと髪をいじるのはこの子の癖。
彼女は典型的に大人しいお嬢様タイプで、絶滅危惧種の大和撫子だ。
「ついでは余計だが、おはよう。どうしたんだ、今日は珍しく1人か?」
で、こっちの筋肉は朝からどこからわくんだその元気って感じだ。
朝から「ファイト、三発!」とかCMでもやってそうな感じを受けるが、実はこの村で唯一の二次元オタクという変わった変態野獣だ。
だが、根は悪い奴じゃなく、どちらかといえば外見に似合わず繊細な性格と言うべきか。
「まぁな。アイツが寝坊してるみたいだから放ってきた」
「放ってきたって、友達がいのない奴だな。起こしてやるくらいの器量はないのか?」
「器量ねぇ。なぁ、梓。もしお前ならいきなり男に起こされるのをどう思う?」
梓は少し考える素振りをして、何だか恥ずかしそうに顔を赤らめながら、
「未来君なら恥ずかしいですむけれど、隆樹君ならちょっと嫌かも」
「おいおい、なんだよその差は。オレは別に三次元の女を襲う気は毛頭ないぞ」
堂々という言葉でもないな、隆樹。
その辺の事も長い付き合いで梓は理解してる、ひいてないだけ彼女に感謝しろ。
学校は小学校、中学校はふもとにある村役場の近くにあるので楽だったが、高校は少しだけ山をのぼらねばならない。
子供の頃、山をかけめぐってきたとはいえ、この長い坂を上るのは億劫だ。
「はぁ、疲れるねぇ」
「お前は爺さんか。こんな坂道くらいなんでもないだろ」
「身体の99%が筋肉で構成されている隆樹と一緒にしないでくれ」
俺の言葉に梓も苦笑していた。
今日もいい1日になりますように、そう思いながらようやく校門をくぐった。
教室に入ると既に教室には飯塚雄輔(いいづか ゆうすけ)がきていた。
メンバーの中でも最も信頼している男で、この村の村長の息子でもある。
優男と言う言葉が似合う彼は今日も趣味が読書からか小説を読んでいる。
その姿がさまになってるからクラスの女子にも人気がある……が、皆は知らない。
そうこの男はただの優男などではない。
読んでる本はなんと官能小説だったりするのだ。
もちろん、カバーはダミーで、ポーカーフェイスも兼ね備えている雄輔にとって、クラスメイトや先生にバレるなんていうミスなどしないだろう。
真顔でSM系小説を読んでたのを知った時、俺はある意味尊敬したね。
と、まぁ、そんな事はおいて置いて、俺はコイツに挨拶をしようと近づくと、
「おや、珍しいな。今日はお嬢さんはつれてないのか?」
「ああ、まぁいろいろあってな。お前は朝から例の本か?」
「そうだ。今日はアブノーマルな方面に手を出してみた」
そうですか、ていうかたまには俺にも貸してください。
なんてそんな危ない会話をしていてヤツらに聞かれでもしたら俺達の明日はない。
この辺で話を切り上げるべきだろう。
話題を当たり障りのないものに変えて話をしてると、
「未来、なんで起こしてくれないのよ!」
怒った女の子の声に前を向くと外見だけならそこらのアイドルとタメをはれるだけの容姿を持った女がいる。
神保留美(じんぼ るみ)という名の美少女は俺を睨みつけて、
「私が遅刻したらどうするつもりよ」
「お前が早く起きておけばいいだけだ」
あっさりとそう切り捨てて俺は自分の席へと戻ろうとする。
それを彼女が俺の服の裾をひっぱるようにして止める。
「そうじゃないでしょ。昔は未来がちゃんと起こしてくれたじゃない」
「この歳になって朝自分で起きる習慣がなかったというのは、長年俺が甘やかしたせいだというのかね?」
「……むぅ」
口元を膨らませる留美をどうなだめてやるかを考える。
彼女は俺と違う意味で両親が朝はいない。
というのもだ、彼女の実家はこの村で唯一の旅館を経営してるわけで、この我がまま娘にかまってる暇がないというわけだ。
旅館も1軒だけというのもあってか、何気に繁盛しているからな。
確かに昔からコイツを起こすのは俺の役目ではあったけれども、最近になってようやく俺も朝っぱらから女の子の部屋に入るという事に対して体裁を気にしだしたのだ。
彼女の親から許可を得ている(逆に頼まれている)とはいえ、さすがに彼女もこの頃は女として意識せざるをえないからな。
さすがに無防備で寝ている姿を見ているとこうムラムラしちゃうといいますか、まぁ、そんな理由でこの頃は外から声をかける程度にとどまってる。
「あのさ、留美。そんなに俺に起こせっていうなら起こしてやってもいい。だがな、お前はもう18歳にもなるのに自分で起きれない上に、同年代の男を部屋にあげて無防備な寝ている姿をさらけ出すという事に対してまったく羞恥心がないのか」
「別に未来ならいいし」
それがどうしたの?といわんばかりにそう言い切った。
おい、それはそれでとんでもない問題発言だぞ。
雄輔はそんな俺達を微笑ましく見ているし、周りのクラスメイトの視線が痛い。
「……何?」
「いや、何でもねぇよ。明日から起こしてやるからそう口を膨らませるな。黙ってりゃ、可愛い顔してんだから」
俺がそう言うと留美は視線を逸らしながらようやく大人しくなる。
コイツの場合はこんな風に照れさせれば大人しくなるんだ。
ちょっと気が強くて、我がままで、自分勝手なだけな所を除けば可愛い子だろう。
「朝から仲がいいね、ミクちゃん」
俺の名前である未来をミクという読み方で呼ぶ女の子は水崎舞(みずさき まい)。
留美と比べても可愛さではダントツだと俺は思っている。
「舞、おはよう。ホントに舞は今日も可愛いなぁ」
俺は彼女の頭を撫でてやるとくすぐったそうにして笑みを浮かべる。
「……何か私と全然態度が違うんだけど」
「そりゃ、そうだろう。お前と舞じゃ可愛さのレベルが違うからな」
俺の言葉にムッとした表情をする留美は置いといて、俺は舞と幸せな時間を過ごすために自分達の席へと戻る。
「るーちゃん怒ってるよ?」
「別にいいさ。アイツならすぐに機嫌は直るから」
留美の機嫌がコロコロ変わるのはいつもの事だから、特に問題視する事はない。
それよりも、だ。
「なぁ、舞。舞って今週の日曜日が誕生日だろ。今年も皆で集まろうって予定だけど大丈夫か?」
「うん。悠里から聞いてる。皆が祝ってくれるのは嬉しいなぁ」
微笑みを見せる舞を俺は本当に可愛らしいと思う。
俺がそう思うのには1つの理由があった。
それは俺が彼女の事を好きだという事だ。
皆はまだ俺が舞のことを好きなのは知らないだろう。
だが、舞は俺が好きだという事を知っている。
なぜなら中学3年生の冬に告白しているからだ。
結果はダメだったが、それ以来の俺達の関係は決してギクシャクする事はなかった。
決して嫌われていたワケではなくちゃんとした理由があったからだ。
だから、今でもこうして傍にいる事ができる。
俺にとって舞は妹のような愛らしい存在でもあり、溺愛しているシスコン兄ちゃんと同じような気分で接している。
俺を不思議そうな表情で見つめている舞の視線に気づく。
「どうしたんだ?」
「ううん、何でもないよ」
何でもないと言った瞬間に表情を曇らせたのを俺は見逃さなかった。
何か悩みでもあるのかもしれない。
それを俺に話してくれるかどうかはわからないけれど、舞のことなら何でも知りたいのが本音だった。
後ろから「何にやけてるのよ」と冷たい声が聞こえる。
ちなみに今まで無視していたが留美は俺の後ろの席だったりするんだ。
「別にー。にやけてませんけど?どこかのお嬢さんの寝顔よりもマシですし」
「笑った顔がすごくムカつくんですけど?マヌケ顔がよけいひどいわよ。鏡見てくれば?」
「もう、ふたりとも喧嘩しちゃダメだってば」
他愛のない事で盛り上がれる何気ない毎日が楽しかった。
そう俺達は皆いつも一緒だったから。
【 To be continue… 】
☆次回予告☆
未来と舞の過去に何があったのか。
その2人の間にいる留美の存在。
10代の複雑な恋心。
未来がした過去の告白。
そして、2人の間に交わされた約束とは?
【第1話:望まれぬ想い】
キミが好きだ。
その一言で全てが変わる。