下一章 上一章 目录 设置
3、帝释天 绘卷第二章:心友 ...
-
帝釈天に出会うまで、阿修羅は数々の手柄を立てたが、仲間と言える者は一人も現れなかった。それはひとえに彼の強さがもたらすものだった。あまりにも強すぎる阿修羅だったが、戦闘中はよく狂暴化して、敵仲間関係なく殺戮の限りを尽くす、そんな彼を止められる者は一人もいなかった。
在结识帝释天之前,阿修罗虽战功累累,却没有人与之为伍,只因为阿修罗虽然强大,却经常在战斗中狂暴嗜杀,不分敌我地攻击,没有人能够制止他。
帝釈天に出会ってから、阿修羅に初めて仲間ができた。
遇到帝释天之后,阿修罗第一次有了搭档。
「我が戦神よ、あなたは正真正銘の奇跡。あなたは必ず天人一族に未曽有の変化をもたらす。」帝釈天はそう言った。「私は翼団という自警団のような組織を立ち上げた。どうか一緒に来てほしい、阿修羅。」
“我的战神,你是真正的奇迹。我相信你将给天人一族带来翻天覆地的变化。”帝释天说道,“我有一个叫翼之团的民兵组织,跟我一起来吧,阿修罗。”
「お前こそが奇跡だ。」阿修羅はこう言った。「おまえに出会った時、俺は何年も探し続けたものを、ついに見つけた気分だった。」
“你才是真正的奇迹,“阿修罗说,“遇到你的时候,就好像有一样我自己都不知道找了多久的东西,终于让我找到了。”
「だから仲間に入れてくれ、帝釈天。」
“所以让我加入吧,帝释天。”
阿修羅の仲間入りは皆を大いに励ました。その後翼団は、いよいよ正式に戦争に参加した。
阿修罗的加入大大地鼓舞了士气,翼之团终于开始积极地参与战事。
戦場にいる阿修羅はいつも一人で先頭に立っていた。彼の霊神体は六本の真っ赤な鬼手を振り回し、時に武器を使ったり、時にそのまま敵の胸を切り裂いたり、時に阿修羅に剣に変えられたりして、彼が敵軍に切り込んだ瞬間に空を引き裂く。故にどんな軍隊が立ちはだかろうと、一瞬で、空は血飛沫に埋め尽くされる。
战场上的阿修罗永远单枪匹马冲在最前,他的灵神体挥舞着六条猩红的鬼手,有时挥舞着武器,有时则直接划开敌人的胸膛,有时阿修罗将它化作一柄长剑,在他跳入千军万马之中的瞬间划破长空,任何挡在他面前的军队都不堪一击,刹那间,通通化作扬在空中的血沫。
悲鳴、切り裂かれる音、呪いや命乞い。黒い戦神はすぐそれに耽って、終わりなき死に惑わされる。殺戮の味で喉が渇くほど、死体の山が高くなるほど、彼の眼差しは狂気を帯びていき、叫び声が轟く。ただ殺戮を繰り返す手は、決して動きを止めない。まるで彼に襲いかかる無数の敵の中で、道を切り開こうとしているかのように。敵と仲間の概念が曖昧になり、彼の触手は鞭のように仲間に振り下ろされた。
悲鸣声,撕裂声,诅咒与祈求声,黑色的战神很快着迷在其中,被无穷无尽的死亡所蛊惑,杀戮的味道在口中变得越发干渴,脚下堆积的尸体越高,他的眼神就变得越发暴虐,嘶吼变得越发狂热。唯独手中厮杀的动作更加狂躁,仿佛想要在向他扑来的干军万马之中寻找一个出口,他开始敌我不分,如同长鞭一样挥舞的触手挥向了自己的同伴。
しかしその時、帝釈天の霊神体が遠くから彼に手を伸ばした。真っ白な鳥のような霊神体は殺戮を飛び越え、屍の山を飛び越え、阿修羅のそばに飛び降りた。
然而就在这时,帝释天的灵神体从远处向他伸出了手,那灵神体像纯白的飞鸟一般,越过厮杀,越过尸山血海,来到阿修罗的身边。
銀色の蓮が血に染まった土の中に根差し、人知れずに咲き誇った。蓮はか弱いけれど、無力そのものだけれど、それでも精一杯阿修羅に近づき、彼を襲う鬼族の鋭い爪を払おうとした。
银白色的莲花在血染的淤泥之上悄无声息地绽放,即使柔弱,即使无力,却尽力伸向阿修罗,试图为他拨开鬼族们杀向他的利爪。
おかげで阿修羅は再び正気を取り戻し、にっと笑って、刃で鬼族の腕を切り落とした。そして血に塗られた戦場を、帝釈天の霊神体と共に進み出した。
于是阿修罗又再度清醒过来,他露出笑容,长剑落下斩断鬼族们的手臂,在血流成河的战场上,与帝释天的灵神体一并前行。
帝釈天は阿修羅こそが天人の本当の英雄だと信じ込んでいる。
帝释天坚信阿修罗是天人真正的英雄。
「もし天人一族が皆あなたのように強ければ、鬼族との千年続いた戦争を終わらせることができるはずだ。」
“如果每一个天人都能像你这样强大,我们定能终结和鬼族的千年战争。”
しかし阿修羅は、帝釈天の華奢な体の中にこそ、とんでもない力が隠されていると信じて疑わなかった。
然而阿修罗却坚信帝释天柔弱的外表下隐藏着世间少有的力量。
「もし誰もが俺のように残虐で、殺戮しか知らないやつだったら、ある日俺が終わりなき災いや暴動をもたらした時、誰が俺を止めに来るんだ?」阿修羅は言い返した。「お前がいなければ、俺一人では進めない。」
“如果世人都像我这般暴虐,只知杀戮,那若有朝一日我开启了永无止尽的兵灾和暴乱,又有谁来阻止我?”阿修罗反问,“若不是你,我是无法真正前行的。”
「いつか、皆きっとお前の価値に気付く。」阿修羅は断言した。
“总有一天世人都会意识到你的价值。”阿修罗笃定道。
天人の戦神たる阿修羅がなぜ暴動をもたらすのか、帝釈天には分からなかった。
帝释天不明白最强的天人战神阿修罗为何而暴乱。
世の中には千万を超える種族がいるけれど、霊神体の融合によって世に生まれ、霊神体の壊滅によって死ぬのは天人だけだった。阿修羅の内なる心の声を、阿修羅がかつて経験した痛みを、帝釈天は知らなかった。
在世间万物种族千千万,唯独天人一族从灵神体的融合而诞生,又因灵神体的毁灭而死亡,帝释天不知道阿修罗怀抱着一颗怎样的心,又曾经尝过怎样的苦痛。
「人を形作るのは□□じゃない、心なんだ。俺の心に巣食う魔物は、俺一人で倒さなければならない。」阿修羅はこう言った。
“定义一个人的并非身体,而是心,我自己的心魔,必须我独自去战胜它。”阿修罗说道。
「運命は私達が共に戦えるように、私達を巡り合わせた。」帝釈天は言った。「あの時戦場であなたの痛みを分かち合ったように、もし何かが足りなければ、私は必ずそれを補う。」
“命运指引了你我相遇,也指引你我一同作战,”帝释天说道,“就如同在战场上我分担你的痛苦那般,若你缺了什么,我一定也会为你补上。”
阿修羅は軽く笑ってそれをやり過ごした。
阿修罗不以为然地笑了。
ある日、二人は鬼族の支配下にある村を助けてくれと頼まれた。阿修羅の活躍により、村は無事に解放された。ある子供の口から、母が深淵に連れ去られ、魔神に捧げる生贄にされたと聞いた阿修羅は、一人で深淵に赴いた。
一日,二人受托前去营救一个被鬼族控制的城庄。在阿修罗的冲锋下,城庄顺利被解放,阿修罗从一个孩子口中听说,孩子的母亲被恶鬼抓去深渊,即将献祭给魔神,马上只身去往深渊救人。
後で事情を聞いた帝釈天は、急いで仲間を連れて彼の後を追ったが、彼らが真っ黒な深淵の奥に辿りついた時、魔神と戦う阿修羅は既に徹底的に狂乱に支配されていた。命をかけて魔神と死闘を繰り返す彼は深手を負ったが、彼は意固地に撤退を拒んだ。その残虐な姿は本物の魔神よりも恐ろしいものだった。彼の霊神体は自滅的な攻撃を決行したせいで満身創痍になったが、帝釈天の呼びかけには答えなかった。
事后才得知的帝释天急忙带人追了上去,而当他们赶到漆黑的深渊深处时,阿修罗已在和魔神的战斗中彻底狂暴。他在与魔神死战,即使身受重伤,也执意不肯退却,残暴嗜血样子比真正的魔神还要可怖。他的灵神体在毁灭般的进攻中满目疮痍,却无论如何也不肯回应帝释天的呼唤。
切羽詰まった状況下で、帝釈天は霊神体で阿修羅の意識を受け入れた。意識のぶつかり合いに苛まれ、帝釈天は跪いた。阿修羅の痛みや狂乱が、津波の如く帝釈天の頭に押し寄せた。彼は胸を力強く掴み、叫び声をあげた。
情急之下,帝释天以灵神体接纳了阿修罗的意识,意识的强行碰撞使得帝释天跪倒在地,阿修罗的苦痛和疯狂如同决堤的洪水般涌入他脑海中,帝释天抓紧了自己的心口,仰头尖叫出声。
次の瞬間、彼は阿修羅の過去を見た……
紧接着,他看到了阿修罗过去的记忆——
天人と鬼族の両方が暮らす村に生まれ、幼い阿修羅はただ一人の家族である母と支え合いながら生きていた。いつまで経っても霊神体が目覚めない彼は、天人と鬼族の嘲りを浴びていた。
诞生于天人与鬼族共生的村庄,年幼的阿修罗与唯一的母亲相依为命,因为迟迟没有显现灵神体,他被天人和鬼族所嘲笑。
弱い彼を受け入れてくれるのは母だけだった。阿修羅を抱きしめ、笑って優しく彼の背中を叩き、その痛みを取り去ってくれる。
只有母亲不在乎他的弱小,将阿修罗抱在怀里,她总是笑着,轻轻拍着他的背,拂去他的伤痛。
「泣かないで、私の阿修羅。」
“别哭了,我的阿修罗。”
天人と鬼族との戦争が起きた時、村の矛盾は激化したあげく、阿修羅の母は鬼族に連れ去られた。母を助けるべく、阿修羅の霊神体はついに覚醒した。
时至天人与鬼族开战,村中的两族冲突终于爆发,阿修罗的母亲被鬼族捉走,为救下母亲,阿修罗终于觉醒了灵神体的力量。
命を授かったばかりの真っ赤な触手は鬼族の爪よりも鋭く、そのまま母を捕まえた悪鬼に襲いかかり、二人を貫いた。
新生的红色触手比鬼族的利爪更为尖利,直指捉住母亲的恶鬼,却将二者一并贯穿。
優しい母は血まみれで彼の懐に倒れ、最後にもう一度彼を抱きしめようとした。しかし彼の涙を拭きとる前に、差し伸ばされた手は力尽きて垂れ下がった。
温柔的母亲浑身是血地在他怀中,试图最后一次抱紧他,伸出的手却在拂去他的眼泪前无力地垂下。
「さようなら、私の阿修羅」。彼女は悲しく笑った。
“再见了,我的阿修罗。 ”她悲伤地笑着。
彼の懐にある母の体が段々冷たくなっていく。
母亲的身体在他的怀中逐渐冰冷。
無双の力はたやすく命を奪えるが、それを亡くなった人に返すことはできない。霊神体が覚醒した彼は力の暴走に支配され、村を破壊しつくした後、流離いの旅を始めた。
无上的力量能够轻而易举地夺走生命,却无法归还已经逝去的人,觉醒了灵神体的阿修罗在力量暴走下,血洗了整个村落,此后开始独自流浪。
幾千万の種の頂点に立つ強者になったけれど、たった一人の大切な人を守れなかった。戦うたびに、殺戮するたびに、血に染まった目にはいつもあの日ことが浮かび上がる。絶えない炎が、彼が生まれ育った地で燃え盛る。耳に入った悲鳴は全部彼の知っている者の声だった。最後に、その全ては冷たくなっていく母の体になる。
成为了万千族群最顶端的强者,却没能留住唯一珍视的人。在每一场战斗,每一场屠杀之中,他浸透鲜血的眼中都会浮现出那一日的情形,无尽的烈火燃烧在他出生成长的土地之上,耳中的每一声哀嚎都化作他曾熟知的村人,最终,又一个个化作母亲逐渐冰凉的身体。
全ては血に塗られた戦争の中に隠された。阿修羅を除けば、誰一人そのことを知らない。そしてついには、阿修羅さえも彼女の顔をはっきりと思い出せなくなった。
一切湮没在血腥无尽的战争之中,除了阿修罗,再也无人记起。而到最后甚至连阿修罗,也再记不清她的样子。
熱い涙が地に滑り落ち、阿修羅の悲痛は霊神体を通じて帝釈天の魂を貫いた。
滚烫的眼泪滴落在地上,阿修罗的悲痛通过灵神体穿透帝释天的灵魂。
帝釈天は手で目を覆ったが、零れ落ちた涙は自分のものなのかそれとも阿修羅のものなのか、どうしても分からなかった。彼の銀色の蓮は頑なに阿修羅の壊れた触手を抱きしめ、相手がいくら足掻いても、決して力を抜かなかった。魔神の攻撃のせいで、両者は区別のつかない一つの肉塊と化した。
帝释天抚上自己的双眼,却不知道指尖的泪水究竟是属于自己还是阿修罗,他银白色的莲花死死抱住阿修罗残破的触手,无论对方如何挣扎,都不肯松手,在魔神的攻击下,二者几乎一并变成了一团再不可分割的血肉。
激痛に蝕まれた帝釈天が声高く叫んだ。「彼女には二度と会えないけれど、私はいつでもあなたの後ろにいる。振り返れば、私はそこで待っている!」
剧痛的侵蚀中帝释天高声地嘶吼了出来,“即使你再也无法与她重逢,我却永远都站在你的身后,回过头来,你就会看到我还在等你!”
阿修羅は急に悪夢から解放されたように目を開けた。真っ白な蓮が闇の中で暖かく優しい光を放っている。
阿修罗如同从噩梦中醒来一般突然睁开眼,那纯白的莲花在黑暗中发出温暖又温柔的光亮。
「痛みはあなたの勇気になる、阿修羅。そして私はあなたの目、あなたの盾になる。」
“你的痛苦将会转化为你的勇气,阿修罗。而我将成为你的眼睛,你的盾。”
闇の中で、彼は彼の道を照らした。それは前に進む道で、帰る道でもある、彼ら二人は、必ず同じ場所で落ち合うのだから。
他为黑暗中的他照亮了路,那即是前路,也是归路,因为他们二人,终将前往同一个地方。
黒い戦神は力を全て絞り出し、ひどい怪我を負った触手を無理矢理剣に変え、闇を切り裂き、魔神の頭を切り落とした。そして最後、彼は蓮に照らされ、母のような暖かい闇に落ちた。
黑色的战神用尽全力,迫使自己重伤的触手化作利剑,划破黑暗,一刀斩断了魔神的头颅。最终他坠入了被莲花所照亮的,如同母胎一般温暖的黑暗。
しかしあの巨大な醜い頭は、地に落ちた瞬間に彼の耳元ではっきりと言い切った。「阿修羅、お前は必ず後悔する。」
然而那丑陋巨大的头颅落下的那一瞬,在他耳边清晰地说道:“阿修罗,你终将后悔。”
魔神の目は頑なに阿修羅を睨んでいる。
魔神双眼死死地望着阿修罗。
阿修羅が再び目覚めた時、魔神との戦闘から既に何日も経っていた。彼の霊神体は半ば壊れていて、誰もが彼は永遠に眠り続けるだろうと思っていたが、帝釈天だけは諦めずに彼を看護し続け、ついに奇跡が起き、彼は回復した。
等到阿修罗再度醒来,距离魔神一战已过了数日,他的灵神体几乎半毁,所有人都以为他不会再醒来,只有帝释天不肯放弃地日夜守在他身边,终于盼来了他痊愈的奇迹。
「お前は俺を助けるべきじゃなかった。」阿修羅はそう言った。
“你不该来救我的。”阿修罗说道。
「私は天人一族の希望を助けた。」帝釈天は答えた。「後悔などするものか。」
“我救下了天人一族的希望。“帝释天回答道。“我一点也不后悔。”